ゴーン被告 正義を求めて 箱詰め逃亡
(2020年1月12日フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」より)
● 日本司法を猛烈批判 ゴーン被告に世界は
こんな悪者に振り回されるのはかないません。
日本は、ゴーン被告を司法的にきちっと追いつめて裁判にかけるというのが本筋です。同時に、今や国際PR合戦になっています。日本政府のステートメントは、きちんと立派な間違いのないものですが、PRという面から考えると、もっと違うやり方もあると思います。
一方、日本として、本当に反省すべき点が司法制度にないのかということもあります。
国際的にいちばん問題になるのは、被疑者の取り調べの時に弁護士を同席させないことです。アメリカには「ミランダ警告」という制度があって、必ず、被疑者に「あなたには弁護士を呼ぶ権利があります」と言わなければいけないことになっています。ヨーロッパも人権裁判所がミランダ警告のとおりにするようにと指示を出していますし、台湾も韓国もそうなっています。主要国の中で日本がその点は孤立してきていて、だんだん「日本は人権感覚がないのでは」と言われるようになっています。そこを、「日本も検討を始めています」とあわせて言えば、その点での批判を封じることになると思います。
有罪率が非常に高いとのゴーン被告の批判に対し、起訴する段階で有罪の確率が高くないと日本は起訴しないという日本の公式な説明はありますが、司法側に「起訴した以上は絶対有罪に」という気持ちがあるんじゃないかという気がしてしまいます。
日本の司法は、今の制度が「全ていいんだ」という大変に固い説明ぶりに終始していますと、どこかを崩されたら全体の信用性が薄くなってきてしまいます。日本側も柔軟にこれから考えていく用意があるという姿勢を滲ませるべきではないでしょうか。
● 法と外交で “倍返し” ゴーン被告を包囲せよ
関係国に協力を要請することは絶対やるべきだといます。
日本側の今までの対応は、受け身、受け身で、言い訳みたいな感じになっています。そうではなく、日本は怒りを表明すべきです。そのためには、逃亡を助けたグリーンベレーの人間など捕まえるべきでしょう。
グリーンベレーを中心とするチームは、15人くらいで日本に来て、20カ所ほど警備のうすい空港を調べていたわけです。彼らは日本の法律を破るために堂々たる行動をしてきたのに、「日本はやられました」だけではなく、怒りをもって、あらゆる手立てをすべきだと思います。
外務省にいたとき日米犯罪人引き渡し条約を担当していました。この条約附表に、40くらいの罪が書かれています。アメリカに対し、懲役一年以上の刑に相当する犯罪人を日本へ送還するよう要求することができる条約です。不法出国を助けた罪は懲役1年以下なので該当しませんが、犯人蔵匿罪があります。これは犯人を逃がしたり、隠したりする罪に問われれるもので、日本は懲役3年以下で、この条約を適用できます。「犯人」とは、判例で捜査の対象に該当している人も含まれます。それをアメリカ政府に要求する。そうすれば、日本はこの逃亡に対して非常に怒っていることを示すことができます。これは国際社会の共感を呼ぶと思います。日本は、どうしてこの辺をもっと強くできないのかと思っています。
● “GPS保釈”の是非 ゴーン逃亡の教訓
GPS保釈の話の前に、他にすることがあるのではないでしょうか。
今回、ゴーン被告の保釈条件は2泊以上の移動には、裁判所の許可がいったはずです。それを堂々と破り、ゴーン被告は、ホテルに宿泊、新幹線に乗車して大阪まで行くといった始末で、いったい監視はどうなっていたのかということになります。 GPSをつけただけで、それだけで解決するのでしょうかという気がします。